何せ私の日常は、散歩以外のほとんどを、作業台の近くにある棚で過ごしている。
 そこでユベールが、ドレスや小物入れを作っている姿を見るのが、私の日課であり、楽しみだったからだ。

 だからそのドレスを、ユベールが頭を悩ませながら懸命に作っていたのも知っている。勿論、それが私のではないことも。

 私の服の場合は、あんな風に悩んだりしない。
 お喋りをしながら、あぁでもない、こうでもない、と楽しそうに言いながら、生地を見せたり、作っている過程を見せてくれたりするからだ。

 けれどその白いレースと黒いレースの二着のドレスは違った。
 時折、私に生地を当てて、イメージが固まると作業台へ。また別の生地を持って来ては同じことを、何度も何度も繰り返していたのだ。
 恐らく、ユベールの中でなかなかイメージを掴むことができないのだろう。それが手に取るように分かるだけに、何も手伝えないことが辛かった。

 そう、鞄の中でしみじみとしていると、突然、上から視線を感じた。しかし顔を上げてはならない。ユベールなら、私に触れるか話しかけるか、するはずだったからだ。
 明らかに、これは別の人間の視線……っ!