「はははっ。それじゃ、少し待っててね。準備をするから」

 ユベールは逃げるように、浴室のある方へかけていった。そうバスタブがあっても、まだ自分ではお湯を張ることができないのだ。この小さな手では。

 私は広げた自分の両手に見る。
 足と同じで、前よりも器用に動かせるようになった。けれど蛇口を捻ることや、お湯の入った容器を持ち上げることまではできない。

 もどかしいけれど、変わらずに私の世話を焼きたがる姿にホッとしてしまう。
 作業している時のユベールは、声をかけ辛いくらい集中しているから。時々、お話したいな、とか。構ってほしいな、とか……。

 私は脳裏に浮かんだ言葉に驚き、首を横に振った。

 先ほどの出来事が、まるで構ってほしくて転んだように感じたからだ。