「だから歩く時は気をつけて。床を張り替えるだけのお金があればいいんだけど……そんな余裕はないし。元々、古い家だから、あっちこっち小さな隙間とか段差とかあると思うから」
「確かにそれは感じたことがありますが、人形の服や小物作りをしているアトリエらしい、風情があっていいと思いますよ。だから無理をして直す必要はないかと」

 それに私はいつしか人間に戻る。今は不便に感じるかもしれないけれど……。

「ありがとう。お礼に洗ってあげたいけど、そしたらまた怒るよね、リゼットは」
「あ、当たり前です!」

 そう、私が歩けるようになってから、ユベールの意識も変わり始めていた。あの日、いかに自分で着替えなどをしたかったのか、サビーナ先生に語ったのが、どうやら効いたらしい。

 お風呂も、わざわざ私用の小さなタオル。洋服を入れる小箱。バスタブも、どこで手に入れたのか、私が入るのに丁度いい大きさの物を用意してくれた。