「顔なんですが、やっぱり鏡で確認させてください」
「何で?」
「だって……」

 ユベールに覗き込まれるのは恥ずかしい、とはさすがに言えず、別に用意していた答えを口にした。

「仮に怪我をしていたら、どんな感じなのか、私も把握しておきたいですから」
「……そうだね。でも、そこには僕も入っていてもいいんじゃない?」
「えっと……」

 私が口籠っている隙に、顔を掴まれて、強引にユベールの方を向かされた。堪らずに私は目を(つぶ)る。

 すると、額と鼻を優しく触れられた。かと思うと、今度は何かを払うように、左右に動き始める。時折、指でトントンと軽く叩かれているような感触まで。

 気になって目を開けたいけれど、ユベールの息遣いと気配を感じてしまい、それもまたできなかった。遠ざかっていく気配を感じても、まだ目を開けられる自信はない。
 何故なら開けた瞬間、ドアップのユベールの顔があったらと思うと、躊躇(ためら)ってしまうのだ。

 その緊張を解いてくれたのは、他でもないユベールだった。