その後サビーナ先生は、種明かしと称して魔法陣を出し、帰って行ってしまった。そう、実は転移魔法陣で自宅に帰り、早朝こちらに戻って来た、というわけなのだ。

「荒療治をしてしまったから、一晩は様子を見たかったのよ。でも、大丈夫そうで安心したわ」
「お手数をかけました」
「何を言っているの? 何度も言うけれど、頼まれたとはいえ、私はリゼットを人形にしてしまったし、その罪滅ぼしをさせてほしいのよ。そもそも、竜たちが迷惑をかけていなければ、こんなことにはならなかったんだしね」
「そう、ですね」

 けれどそれでは、ヴィクトル様やユベール、サビーナ先生と出会わずに、私の人生は終えていたことだろう。そう思うと、複雑な心境になった。

 サビーナ先生は「また来るわね」と言い、家の中は再び私とユベールの二人きり。

 その静寂の中、私は足音を鳴らして、室内をトコトコ歩く。正確には、ユベールが用意したエナメルシューズのせいで、勝手に音が鳴ってしまうのだ。

 うるさいかな、と思い風魔法を使うことも考えた。が、簡単に移動できるため、また足が動かなくなるのは怖かった。

 便利でいいのだけれど、多少は面倒でうるさく感じても、動かすのが一番だから。動かなかった原因を思えば、尚更だ。

 けれど心配なことが一つだけあった。