確かにサビーナ先生は、『特別に種明かしをしてあげるわ』と言っていた。
 それがどんなものかは知らないが、今後のことも含めると知っておいた方がよさそうな案件だった。
 考えてみると、私はサビーナ先生のことを全くと言っていいほど知らないのだから。けれど突然、ユベールが慌て出す。

「ま、待ってください。種明かしをするのなら、片手が塞がっているのは不便ではありませんか?」
「ふふふっ。ようやく気づいたわね。リゼットさえよければ、このまま連れて行きたいところだけど……」
「ダメです!」

 油断した、と思ったのは私だけではないだろう。サビーナ先生の腕の中にいた私は、勢いよく伸ばされたユベールの手によって、引き離された。
 思わず「わっ」と声が出てしまうくらい、強い力で。

「あらあら、冗談なのに可愛いわね。リゼットもそう思わなくて?」
「えっと……」

 私は返答に困ってしまった。正直、ユベールが私に固執する理由が分からないからだ。

 人形になった私を探したのは、生きる目的。見つけた後は? 一人になりたくないと言っていた。そして……。

『リゼットにはお祖父様がいるかもしれないけど、僕にはリゼットしかいないんだ……』

 昨夜の言葉の意味も理解できなかった。そう言ってもらえたのが嬉しくて「何処にも行かない」と答えたけれど……。