「もう、用事が済んだらさっさと帰ってください」
「ユベール。そういう言い方は失礼です。折角、私のために来てくださったのに」

 サビーナ先生の腕の中で嗜めると、さらに不貞腐れるユベール。

「いいのよ。リゼットの前ではいい子を演じているのかもしれないけれど、いつもこんな感じだから」
「サ、サビーナさん!?」
「ふふふっ。そろそろ邪魔者は退場するわね。さすがにこれ以上揶揄(からか)うと、ユベールくんに出禁にされてしまいそうだから」
「そんなことはしませんよ。リゼットにはまだサビーナさんが必要なんですから」

 ユベール。それは必要がなくなったら来るな、と言っているのと同じよ。遠回しに出禁だと、言っていることに気づいていないのかしら。

 けれどサビーナ先生も負けていなかった。

「あらあら、だったらこのまま種明かしをしようかしら」
「何の?」
「もう忘れるなんて、頭に血が上りすぎよ、ユベールくん。リゼットが聞いていたでしょう。私が昨夜、何処で寝ていたのか、をね」
「そうでした」