「リゼット・バルテ、一方的で悪いんだが、私との婚約を破棄させてもらう」
銀色の髪をした男性は、静かに私にそう言った。
ここはマニフィカ公爵家の執務室。机の上で腕を組む、目の前の男性はこの邸宅の主、ヴィクトル・マニフィカ公爵様だ。
紫色の瞳が、私を真っ直ぐ見据えている。そう、私、リゼット・バルテ伯爵令嬢を、声と同じくただ静かに。
いつか言われると思っていたからかな。あまりショックに受けなかった。
私は赤い瞳を一度隠し、頭を下げた。俯いたんじゃない。会釈したのだ。
今までご迷惑をお掛けしました、という意味で。
黒髪が少しだけ前に垂れたが、気にしなかった。頭を上げ、私は用意していた言葉を口にする。
「婚約破棄の件、承りました。その代わりに、一つだけお願いがございます」
「……私に叶えられるものであれば、聞こう」
「ありがとうございます。私が願うのはただ一つです。ヴィクトル様、いいえ、マニフィカ公爵様」
静かにはっきりと告げた。
「私を殺して下さい」
――と。
銀色の髪をした男性は、静かに私にそう言った。
ここはマニフィカ公爵家の執務室。机の上で腕を組む、目の前の男性はこの邸宅の主、ヴィクトル・マニフィカ公爵様だ。
紫色の瞳が、私を真っ直ぐ見据えている。そう、私、リゼット・バルテ伯爵令嬢を、声と同じくただ静かに。
いつか言われると思っていたからかな。あまりショックに受けなかった。
私は赤い瞳を一度隠し、頭を下げた。俯いたんじゃない。会釈したのだ。
今までご迷惑をお掛けしました、という意味で。
黒髪が少しだけ前に垂れたが、気にしなかった。頭を上げ、私は用意していた言葉を口にする。
「婚約破棄の件、承りました。その代わりに、一つだけお願いがございます」
「……私に叶えられるものであれば、聞こう」
「ありがとうございます。私が願うのはただ一つです。ヴィクトル様、いいえ、マニフィカ公爵様」
静かにはっきりと告げた。
「私を殺して下さい」
――と。