もう……こうなってしまっては、仕方ない。

 私が振り返った先には、この国の王ジェレミアの父上たるテレンス様と、私の母側の従兄弟……チェーザレ。

「こういうことですわ。陛下。チェーザレ。私も限界まで我慢しましたけれど、もう無理です。婚約破棄をするならば、彼が断罪を受けるべきですわ」

「……ジェレミア。何ということを。ミレイユには、何の落ち度もないというのに」

 初老の年齢でありながらも衆目を集める口髭を蓄えた美貌の国王陛下は、片手で頭を押さえていた。本当に、頭が痛いと思う。

 ジェレミアが何を理由に私との婚約を破棄しようとしていたかはわからないけれど、私側には何の落ち度もない。

 悪事を捏造しようにも、彼より権力を持つ父である陛下がこの場に出て来ているのであれば、それも出来ない。

 ……私だってジェレミアとこのまま結婚したかったし、彼が早く改心してくれたらと思っていた。

 けれど、いつまで経ってもジェレミアの悪い女癖は変わらないし、私以外の令嬢と一緒に居ることは変わらなかった。

 こうなってしまうことを望んだのは彼で、私ではない。