彼の婚約者として例え蔑ろにされていたとしても、ジェレミアのことがすごく好きだったからだ。

 けれど、こんな……周囲に貴族が取り巻く中で、婚約破棄なんて言われてしまえば、そんな我慢も全部全部無駄だったと思い知った。

 もう……私たちの婚約者としての関係も、これで終わりだわ。

 私は手をぎゅっと握りしめて、これからを生きる覚悟を決めた。

 ジェレミアの婚約者でなくなってしまうのなら、我慢せずに嫌われても別に構わないわ。

「……ああ。そうだ。ミレイユ。お前との婚約は、ここで破棄する。それで、良いんだな?」

 眉間に皺を寄せたジェレミアに再度の確認をするように聞かれたので、私は王族に対する特別なカーテシーをして、彼の言葉に同意を示した。

 ……かしこまりました。私の唯一の王子様だった人。そして、これから元婚約者になる人。

 これからは、私のしたかったことをするわ。

「この時を、待っておりました。ジェレミア様。これからは、断罪のお時間です。よろしいですわね?」

 私がそう宣言した瞬間、ジェレミアの周囲に兵士を取り巻き、彼を両側から捕らえた。