だって……私はずっとジェレミアのことが好きだったし、ウィスタリア王国の数ある令嬢の中でも、彼の婚約者に選ばれているのは私だという高い矜持を持っていた。

 王太子たる彼の婚約者に相応しい令嬢であろうと努力するために、多くの時間を使い、これまでの人生を生きてきた。

 このまま……文句だって何も言わなければ、私はジェレミアと結婚出来る。

 けれど、ここで彼の行動に何か文句をつけて仕舞えば、何をうるさいとジェレミアに嫌われてしまうかもしれないと恐れていた。

 それほどまでに、ジェレミアのことが好きで……本当に馬鹿だった。

 ジェレミアが結婚前にどんな女性と付き合おうが、私と結婚することは、何年も前から決まっていて、私側の行動に何の文句も付けようがなければ、彼は決められた未来から逃げることは出来ない。

 別のご令嬢と結婚したくても、私と結婚してから、何年も経ってからと言われるだろうし、一時の浮気心なんて何年もすれば冷めてしまう。

 これまでに良い子の振りをして何も言わなかったのは、ジェレミアに嫌われたくないというだけの打算だ。

 だから、ずっと何も言わずに黙っていた。