ジェレミアは金髪碧眼を持ち、ひと目彼を見れば誰もが褒めそやすような外見を持つ継承権第一位の王太子様。

 現王と一番に身分の高い正妃との間に生まれ、未来の王ジェレミアの誕生を聞き、国民は喜びで湧いたと聞く。

 公爵家の娘として育った幼い私はそんな彼と婚約出来たと聞いて、とても嬉しかった。

 ……本当にすごくすごく、嬉しかったのだ。

 ジェレミアは王子様で女の子が一度は夢に見るような外見を持ち、とっても優しくて折々の贈り物だって欠かさず、勉強や公務で忙しい時期だって手紙をまめにくれていた。

 けれど、ジェレミアはなぜかここ二年ほど態度は急激に冷たくなり、彼には私以外の令嬢との噂が絶えなくなってしまった。

 見えるところでジェレミアと寄り添っている女の子との姿を見る度に、胸の中が無数に切りつけられるように痛んだものだ。

 それでも、私は何も言わなかった。にこにこと微笑んで、無言のままで耐えていた。

 公的な場に出れば、ジェレミアに軽んじられている私の姿を見て、ひそひそと嘲るように噂されることだってあったけれど、何も言わずに機嫌良く笑顔を崩すことはなかった。