「ちょっとみんな止めてあげな?ギャハハ!」
桃香が大袈裟に笑う。
「なんでこんなことするの!」
沙夜は、声を振り絞って叫んだ。
「私の友達取るのやめてくれる?」
桃香が怒りを露わにする。
「別にそんなつもりじゃ...。」
沙夜が怯むと、桃香が追い討ちをかける。
「久美だって、ホントはウチと仲良かったんだから。」
久美が遠くから様子を伺っている。
クラス中の視線が自分に集まった為、居た堪れなくなった沙夜は教室を飛び出す。
「沙夜!」
久美が沙夜を引き止めようと、声を張り上げる。
シーンとなったクラスに桃香の笑い声だけが響いていた。

家に着いた沙夜は、ベッドに入り毛布を被る。
「こわい、こわい、こわい、こわい。」
沙夜は、呪文のように繰り返す。
そして、先程の疲れもあり、そのまま泥のように眠った。

暫くすると、ママのこちらを呼ぶ声が聞こえた。
「沙夜!久美ちゃん来たわよ!」
眠い目を擦りながら、沙夜が階段を降りると、そこには心配そうな表情をした、久美が立っていた。
「沙夜大丈夫?」
久美にこれ以上迷惑をかけたくない沙夜は、無理矢理笑顔を作った。
「大丈夫大丈夫。ありがとね。」
「ちょっと、部屋上がっても良い?」
本当は帰って欲しかったが、久美なら大丈夫かと思った沙夜は、一緒に二階へと上がった。

久美は沙夜を気遣いながら、沙夜の愚痴や悩みを聞いた。
(これ以上久美に迷惑かけられない...。)
(あれに頼るしかないか。)

沙夜は、久美が帰ったことを確認してから、机の引き出しから、薬の紙袋を出した。
「もう全部飲んじゃおう。」
沙夜は、致死量の薬を手のひらに出し、じっと見つめた。