街の喫茶店で、わたしは、彼とコーヒーを飲んでいた。



「ねぇ、今日のあなた何だかいつもと違うんだけど」


 わたしが、言った。


「そうかい?」


 彼が、言った。

 

「ちょっと、太った?」



「いや、前と変わらないけど」



「そう・・・」








「そろそろ出ようか」


 彼が、言った。


「そうね。そうしましょう」



二人は、喫茶店を出て大通りを歩いていた。



黒山の人だかりだ。



「社長はお元気で、良かったですね」


彼が、言った。


「そうよ。お父さん、ただの風邪だって。肺でも悪いのかと
思ったわ。それはそうと、今日のデートどこへ行く?」



「どこへ行こうか」




しばらく二人は、通りを歩いていた。





「おい、ねーちゃん。可愛い顔してるな。ちょっと
そんな男なんて放っておいて、俺達についてこねーか?」


 数人の男達の一番前にいた男が、わたしに言ってきた。


「なんでしょうか? 放っておいてください」


「おいおい。待てよ!」


 その男が、また、しつこく食らいつく。




「待ってください!」


 彼が、わたしの前に出てそう言った。



「なんだよ! お前には関係ねぇだろ!!」



「そういう訳にはいかないです。止めてください」



「なにを!?」




その台詞の後、彼は、男数人に囲まれた。


そして、殴る蹴るの暴行を加えられている。




彼は、上着のポケットに手を入れた。


そして、何かを指で操作した。




「ふざけんなよー! てめー! こんないい女連れやがって!!」



「やめてください!」


 わたしは、言った。



「やめるかよ!!」


彼は、道端にうずくまった。



それでも、男達は彼を蹴り続けている。








「やめなさい!!」



それは、警官だった。



先ほど、彼は上着のポケットに手を入れた時、指でスマホ
を操作して110番していた。




絡んできた男達は、警官達に逮捕された。











「それにしても、君、大丈夫かい?」


 一人の警官が、彼に訊いた。



「あ、はい。大丈夫です」



「彼女も大丈夫?」



「はい。大丈夫です」



「それにしても、君は怪我してるだろ?」


「い、いえ。服の下にサポーターを入れてましたので、
肋骨2,3本折れたくらいで済みました」



「は!? 一体、君は何者なんだい?」



 警官が、彼に訊いた。



すかさず、わたしは、、、。




「彼は私のボディーガードです!!」



と、声を大きくして言った。













          END