「俺は恋人はいない、今、そんな気持ちにはなれなくて」

あやかは潤一郎の態度に何か訳ありと感じた。
「失礼しました」

あやかはお弁当を片付けて、その場を立ち去ろうとした。

「待って」

あやかは潤一郎の言葉に振り向いた。

「お礼はどうしてもしたいんだ、俺の気が済まない、だから、食事じゃなくて、八神さんが困った時、俺を頼って欲しい、どうかな」

あやかは変な人だと思いながら、絶対に社長を頼ることなんてないと思った。

でもまた断ると、また声をかけられても迷惑と判断して、承諾することにした。

「わかりました、では私が社長を頼ることがあったときにはよろしくお願いします」

「うん、任しておいて」

潤一郎の笑顔にちょっと笑ってしまった。

「なんかおかしいこと言ったかな」

「いいえ、失礼ですが可愛いなって思って」

「可愛いって、そんなに年違わないだろう」

あやかは驚きの表情を見せた。

「社長は二十五歳ですよね、私はもうすぐ四十になります、十五歳も離れてますよ」