「八神さん、実は社長からこれを預かっております」

金丸は潤一郎のサイン済みの婚姻届をあやかに見せた。

「八神さんにサインして欲しいとの社長のご意向です」

あやかは婚姻届を持っている手が震えていた。

「八神さんが社長と夫婦になれば、担当医師との話が出来ます、
私はずっとお二人を見守ってきました、お互いを必要とされていると思います、
社長は八神さんを真剣に愛しています、八神さんだって、わかっているはずです」

(潤一郎さんの気持ちは痛いほど十分にわかっている)

あやかは婚姻届にサインした。

「金丸さん、これを提出してください」

「承知致しました」

金丸は婚姻届を提出した。

あやかは村藤あやかとなった。

そしてあやかは担当医師から話を聞くことが出来た。

「村藤潤一郎さんの奥様で間違いありませんね」

「はい」

「村藤さんは余談を許さない状況です、車から放り出された時、地面に頭を強く打ち付けています、命が助かっても後遺症が出ることを覚悟しておいてください」