ゆかりは潤一郎があやかを抱きしめているところに出会した。

(あの女、やっぱり……)

ゆかりは悔しい気持ちを露わにしていた。

潤一郎に愛情を感じているわけではない。

全ての男が自分に気持ちが向いていないと許せないのだ。

「潤一郎さん」

嫌味たっぷりに声をかけた。

あやかは慌てて潤一郎から離れた。

そして、マンションに入って行こうとした。

「あやか、待って」

潤一郎はあやかの手を引き寄せた。
「今日は約束していないが、何か用か」

「私と言う婚約者がいるのに、ハウスキーパーの女と浮気してるの?」

「君は俺の婚約者ではない」

潤一郎の言葉にゆかりは勿論だが、あやかも驚きの表情を見せた。

「なにを言っているの?」

潤一郎はゆかりに話しはじめた。

「先日、君のお父様、つまり白鳥不動産社長と話をしたばかりだが、聞いてないのか」

ゆかりは全く身に覚えがない。