プライベートの携帯番号を教えるとはなんて人なの?と怒りが爆発寸前だった。

あやかは真面目な性格で、冗談が通じない。

いい加減な男性は許せないのだ。

潤一郎は社長就任の初日、何事もなかったかのように過ぎ去った。

しかし、あやかのことが頭から離れない。

潤一郎は佐久間徹を呼び出し、酒を飲んでいた。

佐久間徹、村藤潤一郎の数少ない飲み友達の一人だ。

「潤一郎、おめでとう、どうだ、社長業は」

「ああ、まあまあってとこだな」

「なんだよ、お前にとっちゃ、朝飯前だろ」

徹は嫌味をたっぷり含めた。

「いや、そうでもない、俺としたことが初日から書類をマンションに忘れた」

「珍しいこともあるんだな、でもお前のことだから、全て頭に入っていて、問題なかったんだろう」

潤一郎は徹の言葉に大きなため息をついた。

「なんだよ、問題あったのか」

「書類は総務の部長に届けてもらった」

「だったら何をそんなに落ち込んでるんだ」

「届けてくれたのは、総務の八神あやかと言う女性社員だ」