(ゆかりさんはこのマンションには来ないって、潤一郎さんは言っていたのに)

インターホンはけたたましく鳴った。
あやかはインターホンに応対した。

「はい」

「開けてちょうだい」

あやかは仕方なくオートロックを解錠した。

ゆかりはずかずか部屋に入ってきた。

あやかは掃除途中だったため、エプロンをつけていた。

まるで奥さんのようであった。

「あなた、なんでここにいるの?」

「あのう、じゅ、いえ、村藤社長に雇い入れて頂いて、ハウスキーパーの仕事をしております八神あやかと申します」

「この部屋は私の婚約者である、潤一郎さんの部屋よ、あとは私がやるから契約解除してちょうだい」

「でも、私が契約しているのは村藤社長なので、社長から言われない限り、契約解除することは出来ません」

あやかは正論をぶつけた。

「何を生意気な……」

ゆかりはあやかに対して手を振り上げた。

「お嬢様、いけません」

葛城はあやかの前に立ち塞がった。

ゆかりは思いっきり葛城の頬を殴ってしまった。