「潤一郎さんと同じ時間を共有出来て、こんなに近くに潤一郎さんがいて、

それにお仕事も与えて頂いて、これ以上望んだらバチがあたります」

「そうか、それなら何かこうしてほしいってことがあったら、遠慮なく言ってくれ」

「ありがとうございます」

潤一郎はスマホに目を向けた。

(どう言う意味だったんだろう、遠慮なく言っていいなら、私と結婚してください、生涯潤一郎さんのお側で暮らしたいですって言いたい)

あやかは全ての言葉を飲み込んだ。

(言えるわけないよ)

あやかはキッチンに戻って片付け始めた。

潤一郎がハウスキーパーを雇い入れた情報は、ゆかりの耳にも届いていた。

潤一郎に対して愛情はすでにない。

しかし、プライドが高い白鳥令嬢ゆかりにとって、潤一郎の側に自分以外の女がいることが許せなかった。

(なんなの、潤一郎の側にいるのは私よ)

ゆかりは潤一郎の婚約者になって三年、一度も潤一郎のマンションへは行ったことがなかった。