あやかの言葉に潤一郎は慌てて掴んだ腕を離した。

「ごめん、でも逃げないで、話をしたいんだ」

そこにあやかのスマホが鳴った。

後輩の梨花からだった。

「先輩?ごめんなさい、急用出来て、また食事は今度でお願いします」

梨花は要件だけ伝えて、スマホは切れた。

その様子に、潤一郎はあやかに言葉を発した。

「約束はなくなったみたいだな、俺と食事してくれないか」

潤一郎はあやかを車にエスコートして、自分のマンションに連れて行った。

部屋に入ったあやかの目に止まったのは、乱雑な酷い状態の部屋だった。

キッチンは汚れ物が重なり、ゴミは溢れかえっていた。

ソファの背には何枚もの服が重なり、床にも物が散乱していた。

「あっ、今片付ける」

潤一郎は慌てて片付け始めた。

「潤一郎さん、よろしければ私がやりますよ」

「えっ?本当に、じゃあ、お言葉に甘えようかな」

あやかは手際よく片付け始めた。

「婚約者の方に頼まないんですか」

「この部屋には一度も来たことがないよ」