潤一郎は仕方なく、ゆかりとの食事の時間を過ごした。

しかし、全くゆかりの話していることは頭に入ってこない。

(あやか、待ってるよな)

潤一郎はあやかにLINEを入れようと、席を外した。

『あやか、ごめん、取引先と食事してる、少し遅くなるけど、心配しないで、
帰ったらお茶漬け食べるからよろしくね』

いつもならすぐに既読になるのに、いつまでも未読のままだった。

(あれ、あやか、どうしたんだろう)

潤一郎は居ても立っても堪らず、ゆかりに事情を話して、タクシーでマンションに向かった。

「村藤様、お帰りなさいませ」

「あやかはいる?」

「いえ、すでにご旅行に出発なさいましたが」

「旅行?」

潤一郎はエレベーターで部屋に急いだ。

ドアを開けると、部屋は真っ暗で、あやかの姿はどこにもなかった。

LINEも未読のままだった。

(あやか、どこに行ったんだ、旅行なんて嘘だよな)

潤一郎はその場に呆然と立ち尽くした。