噂好きな後輩、真壁梨花はあやかの肩を揺らした。

「ああ、ごめん、そうなんだ」

「実はうちの会社業績悪化で、白鳥不動産と合併するらしいですよ」

「えっ、そうなの?」

「やっぱり、二十五歳の社長じゃ、世の中を渡っていくのは難しいんですね」

潤一郎は知っていたのだろうか。

(それなら、なんで私にプロポーズしたの?)

早く潤一郎のマンションを出なくてはいけない。

合併の話がなくなったら、村藤コーポレーションは倒産する。

「真壁さん、私今日早退するね、急用思い出したの」

「わかりました」

「ごめんんね、あと、よろしく」

あやかは急いでマンションに戻った。

引っ越してきたばかりで、アパートも解約してしまった。

(まず、ここを出なくちゃ)

あやかは身支度を済ませて、退職も考えていた。

(潤一郎さんが白鳥不動産のご令嬢と結婚しやすい環境を作ってあげなくちゃ)

手が震えて、退職届がうまく書けない。

郵送で送ることにした。