そこへ秘書の金丸がやってきた。

「社長、出掛けるお時間です、さあ参りましょう」

潤一郎は金丸に半ば強引に連れて行かれた。

「もう、なんだよ、俺は出かけない、昼食は社員食堂で済ますからな」

「何をおっしゃっているのですか、今日は大切なクライアントとの食事会です、行きますよ」

潤一郎はあやかとの時間を奪われた気持ちになった。

(よし、仕事が終わったら、あやかのアパートへ直行だ)

あやかは潤一郎を冷たくあしらったが、社員食堂にきてくれると微かな望みを抱いていた。

しかし、潤一郎は現れなかった。

午後も姿を見かけない。

(そうだよね、社長は忙しいんだから、でももしかして私を諦めちゃったの?)
あやかは仕事が終わると、もしかして社員通用口で待っていてくれるのかもと期待していた。

でもその期待も虚しく社長はいなかった。

(私は何を考えているの)

社長の気持ちを受け入れるつもりもないのに、寂しさだけが募ってきた。

アパートにたどり着くと、わが目を疑った。