由美子は男に騙され続けた人生を送っていた。

「お礼なんて結構です」

「でも、俺の気持ちがすまないんで」

由美子は好意で声をかけてくれたなどと思えない。

つい、嫌味を言ってしまった。

「お礼として、なんでもいいんですか」

「俺に出来ることなら」

その時、由美子のお腹の虫が鳴った。

「飯食わせろって言ってますね」

潤一郎はクスッと笑った。

潤一郎は由美子をエスコートして、食事に向かった。

「自分は村藤潤一郎です、大学二年の二十歳です」

(二十歳?掛けでもしてるの?)

「あのう、名前を伺ってもいいですか」

「私は栗原由美子、三十歳です」

潤一郎は驚きの表情を見せた。

「おばさんを誘って失敗したって感じの顔ね」

「いえ、全然三十歳には見えないですよ」

この時潤一郎は由美子のそっけない態度に好感を持った。

村藤と聞いてほとんどの女性は態度が変わる。

それだけ村藤と聞けば村藤コーポレーション御曹司と結びつくのだ。