ある晴れた日の午後、自宅マンションの屋上から、青葉城恋唄を口ずさみながら、ぼんやりと広瀬川を眺めていた。

生前、父が隠し持っていたマンションなのだが、高校を卒業してからは、私が一人で暮らしている。

ここに引っ越してきてよかったな…。

そうでなければ、夏川さんと出会うこともなかったから。

15、16、17と、なかなか暗い青春を送った私。

ヒステリックな母親と、女癖の悪い父親は、私が幼い頃から、毎日酷い喧嘩をしながらも、世間体を気にして離婚はしなかった。

高校生になってまもなく、心筋梗塞で母親を亡くし、約2年後には父の末期がんが判明。

当時、高校3年生だった私は、どうにか一人きりで父の葬儀を済ませた。

私には勉強ぐらいしか取り柄がなく、金沢の進学校に通っていたが、本格的な受験シーズンはずっと父親につきっきりだった。