私の部屋の前に着くと、

「じゃあ、おやすみなさい」

いつもの挨拶で、軽く互いの拳をぶつけ合った。

「おやすみ。また明日ね」

彼は、すぐ隣の部屋へと向かう。

他人から見たら、私たちは奇妙な関係なのかもしれない。

しかし、試行錯誤の末、ベストな距離感をやっと見つけたのだ。

好きになった人が、彼で本当に良かった。

もし、違う人だったら、こんな幸せはなかっただろうから。

ベッドに横たわり、そっと壁に触れてみる。

丁度、夏川さんも壁の向こう側の同じ位置にベッドを置いているのだ。

「おやすみ…愛してる」

小さく呟いて瞳を閉じた。



FIN