しかし、なかなか踏み出せずにグズグズしていたところ、姉夫婦の現実を知った。

姉と私とでは、少し状況が違うものの、幸せの為に無理をしてみても、結局それは続かないということ。

だから、無理をして、二人の愛を毀したくない。

しかし、既に私は夏川さんに無理をさせているだろう。

夏川さんの年齢を考えると、もう、私のほうからけじめをつけないといけない気がする。

部屋に戻ると、夏川さんに電話をかけた。

「オリエちゃん、声が暗いよ。どうした?」

「ねぇ、近いうちに会えないかな?大事な話があって」

「いいよ。それこそ今夜でも」

「ありがとう」

夏川さんを手放すことは、体が引き裂かれるほどつらい。

しかし、姉夫婦のように、愛が毀れてゆくのを感じながら暮らすほうが、きっと、もっとつらい。