今日もまた、自宅マンションの屋上から、広瀬川をぼんやりと眺めている。

そして、夏川さんと出逢った日のことを思い出す。

私を送ってくれた夏川さんと、ここで一緒に夜景を眺めたこと。

あの時から、ゆっくりと恋が始まった。

もう何度も、めぐる季節を共に見送ってきたが、夏川さんへの想いは褪せることがない。

むしろ、あの頃より、今のほうが想いは深まっている。

それなのに、私は変われないままだ。

相変わらず、夏川さんを自室に呼ぶこともできないし、旅行に行っても部屋を別にしている。

デート中にしても、いつも私は夏川さんのシャツの袖をつまんで歩いているのも変わらないし、キスしたのも一度きり。

本当は、もう何度も無理をしようと思った。

無力な私は、夏川さんの為に出来ることが何もないなら、せめて躰だけでも差し出そうと。