そう言ってくれたが、何となく申し訳ない気持ちになり、

「えっと…キスぐらいなら大丈夫かもしれない」

「かもしれないって…因みに、経験あるの?」

「ないけど、たぶん大丈夫」

「無理しなくていいんだよ」

「試してみる価値はあるかも…?」

そう言うと、

「嫌だったら、ちゃんと言うんだよ」

念を押された上で、軽く唇を吸われた。

正直、かなり苦手だと感じたが、好きな人にそんなことは言いづらい。

「オリエちゃん。無理しなくていいんだってば」

夏川さんに言われ、

「どうしてそう思うの?」

そう尋ねると、少し可笑しそうに、

「そんなの、顔を見たらすぐにわかるよ」

一体、私はどんな表情をしていたのだろう。

「気にしなくていいって。世の中にはいろんなカップルが居るし、そういうことは一切しない人たちも居る。こうでなければいけない、なんて決まりはないから」