二度と戻らない青春や明るい未来と引き換えに、遺産を得た少女…当時は、周りだけでなく、自分でもそう思っていた。

しかし、今となっては、高校時代がそこまで楽しかったわけでもなく、大学に進学していたところで、どのみち仕事はうまくいかなかったことに変わりはないのなら、きっと、これでよかったのだろう。

「私ね…。昔は、どうして自分がこんな目に遭うのかと思ってた。でも、結果オーライといえばそれまでだけど、正しい選択だったと思うの。そうじゃなきゃ、夏川さんとも出逢えなかったし」

そう言うと、夏川さんは、優しくも切なげに私を見つめた。