夏川さんの車に乗り込むと、助手席の倒し加減が私にとってピッタリの角度なので、いつも通りリラックスできる。

「この角度、キープしてくれてありがとう」

「そこは、オリ姫のリザーブシートですから」

夏川さんはそう言ってクスクス笑う。

「でも、友達が隣に乗ることぐらいはあるんじゃない?」

「少しでも角度がズレると、元に戻すのも大変だし、変な匂いがついても困るから、友達を乗せる時には、後ろに座ってもらうようにしてるよ」

その思いやりが、とても嬉しいのに、少し哀しい。

焼肉店に着くと、

「遠慮せず、好きなだけ食べてね」

夏川さんが微笑む。

「はーい!いただきます!」

その言葉に甘えて、本当に遠慮なく食べたいと思いつつ、やはり心の何処かで遠慮してしまう。

しかし、夏川さんも痩せの大食いなので、すぐに遠慮は消えていく。