一部始終を見ていた大学生たちは、わたしと高野くんを見比べて。
それから、ドッと笑った。
「なんだよー、痴話喧嘩かよ」
「凄んでるのかっこよかったよ」
「そうそう、俺らが危ねえ奴だったら速攻逃げないとな」
「でもこんな時間に彼女ひとりで出歩かせんのはいけないな」
各々が好きに喋って、解散解散、と離れていく。
最後に、一番に声をかけてくれた人が残った。
「家近いって言ってたしさ、彼も来てくれたけど、夜に出歩くのって本当に危ないから気をつけて」
「はい、ごめんなさい。ありがとう」
「ん、あとさ、来てくれるかわかんなくて泣いてたのか、違う理由があるのか知らないけど、会えたんなら全部伝えたらいいよ。お兄ちゃんも、この子泣いてたからさ、ちゃんと話せるといいな」
「い、言わないでいいです」
「言わなきゃ隠しそうだなと思って。仲直りできるといいな」
にこっと人当たりのいい笑みを見せて、前を行く数人を追いかけていった。
残されたのは、わたしと高野くんのふたり。
相変わらずぬるい風、でも肌は先ほどよりも熱い。