「わたし、恋愛漫画の読みすぎ?」

「たぶんそうだよ」

「え、いや、高野くんも大概だから。同意しないで」

「ごめん」

「なんで、素直」

「こういうときは折れた方がいいんだろ」


わかっているのかいないのか、ずれているようで、正しいと言われたらそうであるような気もする。

少しだけ話が笑いに逸れたら、今までになかった距離感が急に恥ずかしくなって、高野くんの肩を押す。


「離れんの?」

「だって、ちょっと近すぎ……」

「どうしたらいいのか話してないのに?」

「なんのこと……」


そこまで言いかけて、先の自分の発言を思い出す。

かっと頬に熱が集まって、ぐんっと顔を下に向ける。


「氷見さん」

「はい……」

「おれも、好きで、大好きだからさ」

「ううう……」

「付き合ってください」


顔も上げられないくらい恥ずかしいけれど、この告白を顔も見ずに聞くのは違う気がして、高野くんも最後の言葉はわたしが顔を上げるのを待っていると気付いたから、ぱちりと目を合わせた。

笑みは仕舞って、真剣な顔でそう言うから、わたしはまた、高野くんのことが好きだなあって溢れるほどに込み上げて。


「よろしくお願いします」

「はい、よろしくね、氷見さん」


好きで、それから、大好きで。

夏の終わりが、特別になった日。