「会いたいって、言えばよかったな」
「なんで言ってくれなかったの」
「我慢できたからな」
「しなくていい我慢だよ、それ」
「そうだな、お互いさまだ」
高野くんの額がわたしの頭のてっぺんにぶつかる。
こつんと音を立てて、小さく痛くて、それから顔が見えなくなったことが不満で、今度はわたしが高野くんに触れた。
輪郭が、骨格が、女の子とは全然ちがう。
男の子なんだって、知ってたけれど、知らなかった。
「もっとさ、時間がかかると思ってたんだよ」
「え……?」
「そりゃあ、仲はいいと思ってたけど、でももう好きになってるのはおれだけで、氷見さんはまだ違うかもって」
「そ、んなわけないじゃん。好きになるでしょ。好きって、わかってなかったの?」
「わかんねえよ、おれ、誰かとそんなんなったことないし、氷見さんは気付いてた?」
「夏休み前には……両想いだと、思ってて。高野くんも同じこと考えてるだろうなって、ぜんぜん疑ってなかった」
同じことに喜んで、同じことで楽しんで、同じことを笑うから、思っていることも同じだと、勝手に信じ込んでいたけれど、そんなことはなかったらしい。
へな、と体の力が抜けそうになるのを、高野くんが支えた。