どうせ両想いだ。
好きだといえば、同じ言葉が返ってきて、その日が記念日になる。
贅沢な悩みだと、夏休み前に先輩と別れた友だちは呆れるだろう。
さっさと付き合ってしまえと言われたことだって、もう片手じゃ足りない。
言いたいのに、言えない。
恋をしている人になら、きっと、わかる。
「好きで、それから、大好きで……どうしたら、いい?」
恋をしているその人に、こんな言葉をかけてしまうほど。
好きで、好きで、たまらない。
「それで泣いてたの、氷見さん」
「もうそれいいから……」
「おれのことが好きで泣いたの?」
「ちがうよ、さっきはいっぱいいっぱいで、気持ちが」
「じゃあ、今はどうして泣いてるの」
触れなかったくせに、距離を測っていたくせに、笑みを隠さずにいる上機嫌な高野くんはわたしの頬に躊躇いなく触れる。
こぼれるまでは涙じゃない。
そんな自論、高野くんに邪魔されて、崩れ落ちた。
ぽろぽろ泣いて、きゅっとくちびるを噛む。