「駅前に結構色んな店があるね」
竹内くん?
「あ、デカい公園」
あのー……
「ここにコンビニあるんだ」
「あの、竹内くん」
「ん? 何?」
「何って、どこまで着いてくるの?」
もうほとんど家の前だ。
「どこって——」
「つばさーおかえりー!」
背後からお母さんの声がする。
「あのさ竹内くん、もしかして送ってくれたのかもしれないけど、こういうのはさすがに……」
「あらー! もしかしてはーちゃん? 大きくなったわねえ!」
え……?
羽衣子(ういこ)おばちゃん! おひさしぶりです。」
「はーちゃん、イケメンになって!」
目の前で、竹内くんとお母さんが親しげに話している。
「つばさと一緒に帰ってきたのね」
「はい。つばさ先生、僕のクラスの担当でした」
「あら! そうなの? それにしてもつばさが先生って呼ばれてるなんて変な感じね〜」
わたしひとりが取り残されて、全然話に着いていけない。
「え? はーちゃん? 誰が?」
「やっぱり、全然気づいてなかったんだ」
「あら、まさかつばさ、気づいてないのにここまで一緒に来たの?」
お母さんはなぜか「あはは」と大笑いしている。
「ひさしぶり、つーちゃん。今日からお世話になるイトコの隼人です」
「は!?」
竹内くんが、はーちゃん?
「だって、はーちゃんってこんな感じの身長で」
地面に手のひらを水平に向けて、小学生の身長を表してみせる。
「女の子みたいに華奢で声だってかわいくて、それに、すっごく元気に入り回ってるような子だったじゃない」
わたしの服にセミの抜け殻をくっつけて笑っているようなヤンチャ坊主だったじゃない。
「嫌だなあつーちゃん。何年前の話? 僕だってもう17だし、大人になったんだよ」
はーちゃんこと竹内くんは、教室のときと同じ落ち着いた顔で笑ってみせた。