帰還

この現象は、私と真子にだけ起こっている。精神医学では、説明がつくのだろうか。最初のテレポーテーションは、過去へのタイムスリップ。今度は現実の世界での意識のテレポーテーションが起こった。真子の病室へ行くわけにはいかない。真子は人気絶頂のアイドルだ。とにかく、真子とのLINEは、繋がる。真子の病室へ主治医が入ってきた。入院してから、一週間。容態がすぐれないと打ち明けた。主治医は、精神科の受診を勧めた。内科的には、異常が見られないらしい。真子はだいぶ痩せていた。あまり食事も喉が通らない。すると龍太郎からLINEが送られてきた。そのメッセージを見ると、こんな内容が綴られている。
「真子、もしかしたら。永遠に元には意識が戻らないかもしれない。希望は。熊本の病院に入院している。ふたりの容態を聞いたら、意識はないが、生きている。昔。映画、八年越しの花嫁を見たかい。意識が、八年目に戻ったらしい」そこまで、読むと、真子は、涙が止まらない。精神科の受診を勧められたと伝える。咄嗟に私は、えむを得ない、精神病院に隠れるかと提案した。真子は、嫌とは言えなかった。もう、入院はしたくない。でも、わかりましたと伝えた。私は、都内の精神病院を調べた。若い頃入院してた精神病院は。移転になったらしい。でも、いい印象はしない。極秘で、熊本の通院している精神病院が浮かんだ。精神科医も顔見知りだ。情報は、隠ぺいしてくれる。この提案に、真子はうなづいた。問題は私だ。この部屋は、男のものだ。撤去するわけにもいかない。私は。涼子に電話した。涼子はかなり貯金がある。私が暫く管理するからと協力してくれる。私より、真子の移送が問題だ。なんたって芸能人だ。支離滅裂で、周りの人間達を騙すしかない。熊本に移送の前に、都内の精神病院に、とりあえず入院しようと言う運びになる。真子も。精神的症状は、演技でなんとかなる。位は心得ている。精神病院は。本人の意思さえあれば、簡単に入院できる。本人しかわからない世界だから。でも、これまでの出来事は、熊本の病院に移ってから相談する事にした。真子はとにかく、外部との接触を断つ。ふたりは、別のふたりが生きてる以上は意識が元に戻る可能性があると言う事。

真子には深夜に極秘退院で、明後日。熊本に向かう事にした。熊本の病院には、予約を夕方15時にいれた。その時。この世界は、現実に生きていた世界なのだろうかと疑問が浮かんだ。ミーが言ってた。多次元宇宙論。によると無数の並行宇宙が存在して、自分と言う、ホログラムで形成された自分が存在するらしい。手にとっている。スマホの画面の異常から充分に、別の世界である。可能性がある。熊本の精神病院に入院となっても、龍太郎と言う私と真子と言うえりは存在しないのだ。真子は東京の地図を手にして、明日、一日。観光したいと言ったが。何せ、真子は、アイドルのえりと言う事。街を歩いていると、勘のいい人なら、見破られる。私は、真子に、タクシーで品川プリンスホテルに予約をしたので。ロビーで待つ様に指示した。そして、濃い、サングラスをかけて。真子は冴えない表情してる。もう疲れたらしい。真子は、この部屋は、5階だし窓を壊して飛び降りろうか。
「龍太郎さんが。私に、キスなんかするからこうなったのよ。龍太郎さんは、もしかして、宇宙人。私は普通の女性よ」私は、何度もため息をつく。その時、ふと浮かんだ。私は、真子をいきなり抱きしめて、接吻をした。真子は、唇を離さない。五分程、その状態が続いた。ふたりはだんだん意識が薄れていき、そのまま深い眠りについた。
気がつくと、景色が違う。そこは、私の部屋だった。その時、スマホの着信がなった。受話器を取ると。友達の浩美さんからだ。
「真子ちゃんも焼肉。来るって」私は。突然の言葉に、焼肉と聞いて。記憶が蘇ってこない。今日は、2022年3月15日。あの日から、二年が過ぎていた。どうやら、今日は、浩美さんと、ゆかりさんと真子さんと、焼肉に食事に行く約束をしていた見たいだ。私は、どこだっけと、都築焼肉よと。把握した。スマホを手に取ると。あの異様な画面にはなっていない。私は、LINEのトーク画面を過去に遡って、文章を追ってみた。記憶にはないが、かなりの呟きを、この二年間。真子にしているが、真子の既読は、全くついていない。そして、最後に既読がついているのは、あの日だった。
「食事は、浩美さんが、コロナウイルスが酷いから、延期しようって」次の文面が、おかいしい。
「じゃ明日、公園を散歩しない」次の真子のトークは、「明日は、用事があります」ふたりは、会う約束をしていない。とにかく、真子達を迎えに。車に乗って、待ち合わせ場所に向かう。

到着すると三人が歩いて来た。私は真子の顔を見たが、いつもの明るい雰囲気。昨日の記憶はないみたいだ。「最近、調子はいい」
「薬飲まなくなった。診察も、たまに来ると良いって先生が言ってくれた」その時。私の耳に、囁く声がした。
「セニョリータ」

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