高校時代に何度か過ごしたことがある、馴染みのある広いダイニングルームに入る。

部屋に入るなり、優弥はそっと私の前に跪いた。

「今日夏祭りで一緒に秋山一家と過ごして、楽しかった。

同時に、俺と琥珀もあんな風な家族になりたいな、って思った。

琥珀さえ良ければ、俺と同じ苗字になってくれますか?」

私の掌に、指輪の入った小さな箱が乗せられる。

「もしかして今日、ずっと言いたかったこと、ってこの言葉だったんだ。

断るわけないでしょ?

ちなみに、学校にも優弥にも迷惑かけるけど、優弥の夢叶うから、ちゃんと名前考えておいてね?」

渡された小さな箱は、そっとテーブルに置いた。

教師になったばかりの給料ではとても買えないであろう値段の婚約指輪を壊してはマズい。

きょとん、とした顔の優弥。

「は?それって……

ここに、いるの?

俺と琥珀の赤ちゃん……」

私も、まだ実感がわかないんだけどね。

お腹もまだ出てないし。

そうじゃなかったらこんなこと言ってないでしょ……

それに、心当たりならあるでしょ?

はるばるアメリカのロサンゼルスまで野球観に行った日よ。

優弥が寝かせてくれなかったおかげで、目の下にクマできて大変だったんだから!

先輩教師や生徒にまで心配されたんだからね?

時差ボケで寝不足で、って上手く誤魔化したけど。


さて、プロポーズも成功したところで、優弥もシャワー浴びてくれば?

雨に降られて、パパさんに風邪ひかれちゃ困るし」