つい所在なさげにキョロキョロと辺りを見回してしまう。

「もう、琥珀ったら。
らしくないぞ?どうした?

とりあえず麦茶でもどうぞ?

外、暑かったでしょ。

朝晩は大分秋めいてきたけど、昼が猛暑なの、勘弁してほしいよね。

体調おかしくなりそうよ」

幼稚園も夏休みなので、娘の深明(みあ)ちゃんの機嫌を取りながら、私の相談を聞いてくれた。

「なるほどねぇ。

まったく、アンタたちくらいよ?

まともにプロポーズしてないの。


この際だから、琥珀から言っちゃえ。

そういうことは男の人から言わなくちゃいけない、なんて決まりはないんだから。

それに、正瞭賢OGだからか、いろいろと風の噂が入ってくるのだけれど。

生徒にもバレバレだそうじゃない。

琥珀と(たつみ)くん、同じ学校の教師で恋人だって」

きっかけは、背伸びして行ったフレンチレストランだった。

私と優弥の繁忙期が終わったお疲れ様会と、久しぶりのデートを兼ねていた。

そこに、生徒の1人がたまたま来店していたのだ。

その人は、両親の結婚記念日のお祝いで来たのだとか。

何たる偶然、何たる不運。

その生徒に罪はないのだが。

「でも、夏祭りでプロポーズ、ってどうなのよ……」

彼の両親には大層気に入られている。

優弥の母親は超がつくほどのミーハーだ。

私の父でアイドルの奈斗(ないと)

彼のサインやグッズを何度もお願いされた。

今は俳優業にも本腰を入れている。

いくらでも手に入るので、依頼された時は、しっかり渡すのだが。

優弥の妹の優梨(ゆり)ちゃんも、私を本当の姉のように慕ってくれている。