「天ちゃん……ありがとう」
「はいはいはーい! いい雰囲気の中失礼しまーす」
「はいそこ、それ以上天ちゃんに近づかないー。言っておきますけど天ちゃん、ご両親にそれはそれは大事に育てられた一人娘だから、天ちゃんと手をつなぐより先にご挨拶に行った方がいいですよ」
私と海さんの間に割って入ってきた友達二人の言葉に、海さんは「そうなんだ」と深くうなずいた。
「わかった。アドバイスありがとう」
海さんの、人を疑うことを知らないようなまっすぐなその返事に。
「……ねえ、この人天然?」
「あたしもそんな気がしてきた。天も抜けてるとこあるから、心配だな」
と、友達二人がコソコソ話しはじめ。
「と言うわけで天ちゃん、今度都合つく日、ご挨拶に行かせてください」
「は、はいっ。あ……その、日程合わせとかで連絡すると思うので……訊いてもいいですか?」
「あ。そうだった。それで天ちゃんに心配させちゃってたんだよね。なんか天ちゃんとは約束しなくても逢える感覚だったから……」
申し訳なさそうに言う海さんと、お互いスマホを取り出す。
そうだったんだ、と思うと同時に、私もそんな感じだったかも、と思った。
だって、私から連絡先を聞いたこともなかったから。