学園一のイケメン〇〇君は作画が一定していない。絶世の美男子なのは間違いないんだけど、全体的なパランスが変だったり、見る角度が違うと別人に見えたりで、安定しないのだ。
 そんなときは、しばらくすると元通りになる。「休み時間にメイク直しでもしてんのかな」とか「今日は良さそう。家で休んだら戻ったね、きっと疲れていたんだよ」とか話していたんだけど、ある日あたし、見てしまったの。
 使っていない教室に人影が見えたんだ。それで、何の気なしにチラッとみたら、脱皮中の〇〇君がいたの。ガン見したわよ。
 どうやら脱皮じゃなかったみたい。黒い人影みたいな何かは、脱いだ皮を裏返しにして、丁寧に汚れを取って、目鼻立ちの崩れた顔のパーツをちょちょっと直した。それで、その人影が再び皮を着たところで、あたしは教室のドアを開けた。
「〇〇君、それ、どうやってんの!」
 突然あたしが現れたもんだから〇〇君はビビりまくったけど、絞めたら白状した。
 〇〇君は、宇宙のどっかから来た星の王子様だった。身分を隠して庶民生活を満喫していたのだが、運悪く、あたしに見つかってしまった。
「どうか、このことは秘密に」
 そう懇願されたので秘密にするって約束したけど、このネタを生かさないってこと、ありえないっしょ!
 あたしも、今の外側の上に一枚、今より奇麗な顔の皮を着けたいんだけど……って言ったら〇〇君、あたしのために一肌脱いでくれるかな?