本当はマスクと眼鏡なんか着けたくない。

でも、自分の顔の事を悪く言われた以上隠す術しかなかった。

他の学年の階段を登っているとき、ふと思った。

良かった。

去年、学級代表になってて。

そのお陰で行き道が分かる。

帰り道はいつもなぜか分からないが迷子。

でも、今日はその心配はいらないーー。

屋上に続く階段をのぼった。

そして、屋上の鍵を閉めた。

よし、ばっちり!

でも、「あいつ」私が抜けた時いなかった。

まあ、あいつはトイレ行ってるよね…

これで安心。

やり残したことは……うーん、









何もない。









もう安心。

遺書も書いた。

靴を脱ぎ、その下に遺書をおく。

眼鏡とマスクもおく。

靴下で登る。

登る。登る。

良い。

フェンスを登りきる直前、誰かにお腹辺りにぐっと腕を回されグラッと傾き誰か分からない人に体重を預けることに…。

邪魔すんな!

クソったれ!

私がムカムカしている間に声をかけられた。

「おい!ばか!生きろ!死ぬな!死にたいと思うほどなら俺んちに住め!なんでもしてあげる!」

と、叫んでる。

私は未熟者だけど、知っていることがある。

そうやって簡単に言っといて何にもしてくれない経験…父から言われ、心に傷が出来たことがある。

まあ、現在も進行中。

なんでこいつは止める?

だって、人の死なんか自由じゃん。

この世にやり残したことはないんだよ?

どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?

ぁあーーーーーー!!!!!!!!

「嫌っ!いやだ!死なせて!ぁあーーーーー!!!!」

「おい。落ち着け。俺だ。馬宮だ。」

なんで、あなたなの?

「よりによってなんであんたなの?」

最悪。
ってか、腕をお腹辺りにまだ置いてる。
せ、セクハラ!

「腕離してぇ」

と、思いっきり近くに置いてある鞄をそいつの頭にぶつけた。

「い、いて!何すんだよ!これで脳細胞が600こ潰れたらどうする!」

「そんな潰れんわ!!」

「なんだ、お前口わりいじゃん」

なっ!!

「う、うっさい!」

「ふーん、俺にそんな態度とって良いんだ?みんなに言いふらしてやる。」

そう言われて、冷や汗が垂れる。

それだけはっ!

「そ、それだけは!!すみません!」

「うーん、口止め料として昼放課毎回この屋上に来い!」