ティーカップに入った紅茶に、二度三度息を吹きかけ、一口飲む。

き、気まずい。

ダージリンのやや濃く色が出た紅茶に反射した私の眉はこれでもかというほど下がっていた。

実は先ほど高野くんが入れたチェキは普通のチェキではなく、ティータイム付きチェキというやつだったらしい。

ティータイム付きチェキは、メイドとのお茶一杯分の時間を一緒に過ごせるというサービスであり、現在まさしくそのサービスが進行中だった。

一難去ってはまた一難とはこのことだと思う。

何か、話題を振らなきゃ。

しかし、そう思うほど頭が真っ白になって、先ほどから二人の間には沈黙が落ちるばかり。

焦る私とは対照的に、正面に座った高野くんは、綺麗な所作でコーヒーを飲んでいる。

全くひとの気も知らないで優雅なものだ。

このままじゃ、私は一言も話さないまま紅茶を飲み終えてしまう。

それはメイドとしてよろしくないだろう。

そう思い、私は意を決して声を発した。

「あ、あの……」

すると、高野くんの目がこちらを向いた。

「……何すか」

その視線に耐えられず、私の顔は手元に落ちる。

「……どうして、私を指名してくれたんですか?」

否、純粋に私が知りたいだけかもしれない。

「気になったから」

「え、」

ダークブラウンの涼しげな瞳と視線がかち合う。

「っ、」

「初日に対応してくれた人っスよね。挙動不審だったんで俺なんかしたかなって」

「あ、そっち……」

私の中で全てに合点が入った。

「そっち?」

「な、何でもないです」

一瞬でも変な勘違いをしそうになった自分が恥ずかしい。

私は全力で被りを振った。

「俺あの日はじめてだったんで、もし失礼があったら申し訳ないなって」

「っ、そんなことないです。全部、全部私の問題なんです」

私のせいで高野くんを悩ませていたことが、情けなかった。

「私、人見知りで口下手で不快にさせてしまってたら、すみません」

「……全然不快じゃないっスよ。俺も話すの得意な方じゃないんで。むしろなんていうか、……安心します。ツインテールの子は圧がちょっと怖かったんで」

そう言ってはにかむ高野くんの表情は、今まで学校では見たことのない顔だった。