相手がオーバル子爵なら、本当に問題はないかもしれない。こういったことに関しても、地位の高さと比例するものだ。

「ああ、そうだ。兄上とネメルナ嬢の婚約は今日にでも正式に発表されるようだ」
「今日、ですか?」
「ああ、父上としては国内で起こった貴族の不審な死に二人が関わっているなんて、思ってもいないことだろうからな。まあこれは、俺達からしてみれば好都合だ。これで兄上も芋づる式で叩けそうだ」
「エリトン侯爵家としても助かります」

 私が、アヴェルド殿下とネメルナ嬢のために婚約を破棄したという事実は、既に国中に知れ渡っているはずだ。
 先日のお茶会の時も、ラフェシア様の友人からそのことは指摘された。多分、お父様が既に喧伝しているのだろう。
 ここでネメルナ嬢との婚約が正式に発表されたら、私の悪評も特に流れはしないはずだ。その後に何かが起こったとしても、それはエリトン侯爵家にとっては与り知らぬことである。