「兄上の可能性は低いだろうな。暗殺なんて大それたことは、兄上にはまずできない」
「ええ、私もそう思っていました」

 イルドラ殿下は、私と同じように考えているようだった。
 アヴェルド殿下には無理、弟であるからもそのお墨付きをいただけるなら、今回の件の首謀者はオーバル子爵ということになるだろう。

「イルドラ殿下の方で、今回の事件とオーバル子爵との関与を調べることは可能でしょうか?」「ああ、そのことについては既に調べている。丁度、俺の密偵が二つの男爵家を調べていたからな。そのまま調査を行ってもらっている。優秀な二人だ。すぐに事件のことはわかるだろうさ」
「そうなのですか……」

 私の言葉に対して、イルドラ殿下は自信を持って答えてくれた。
 彼の密偵という人達が、どのような人達かはよく知らない。ただ第二王子の密偵なのだから、優秀であることは間違いなさそうだ。