私は、王城の客室に来ていた。
 目の前には、イルドラ殿下がいる。私は、彼にメリーナ嬢から聞いたことを全て伝えたのだ。
 その結果、イルドラ殿下は頭を抱えている。それは当然のことだ。自らの兄の愚かな行為によって、ここまで大きなことが起きたのだから。

「兄上がここまでの愚か者だとは知らなった。知らなかったことが情けない限りだ」
「……アヴェルド殿下も巧妙に隠していた、ということでしょう」
「まんまとやられていた訳だ。まったく、兄上は何を考えているのだか……」

 イルドラ殿下は、少し怒っているような気がした。
 それはアヴェルド殿下への怒りだろうか。それとも自分への怒りだろうか。
 しかし何はともあれ、彼に無事に事実を伝えられたことは一安心だ。これで彼も、大手を振るって行動することができるようになるだろう。

「モルダン男爵とラウヴァット男爵の件については、俺も聞いている。丁度、調べていた所だったからな。その二組がいきなり亡くなって焦っていた所だが」
「首謀者は、アヴェルド殿下かオーバル子爵だと思いますが……」