ディートル侯爵家の屋敷で一夜を明かした訳だが、正直あまり眠ることはできなかった。
 アヴェルド殿下の女性関係において、何かしらの陰謀が渦巻いている。その不安から、中々寝付けなかったのだ。
 とはいえ、当事者として数えられているか怪しい私の不安など、そう大したものではない。メルーナ嬢などと比べると、些細なものだ。

「おはようございます、ラフェシア様、それにメルーナ嬢も」
「ええ、おはよう、リルティア」
「おはようございます、リルティア嬢」

 私が食堂に赴くと、既にラフェシア様とメルーナ嬢がいた。
 二人は、何やら神妙な面持ちをしている。そういった表情をしているということは、何か良くないことでもわかったのだろうか。

「ラフェシア様、何かありましたか?」
「使用人達が調べた結果、モルダン男爵とシャルメラ嬢のことがわかったわ」
「……二人に何かあったのですか?」
「ええ、亡くなったそうよ」
「……そうですか」