「ネメルナは素敵な女性だったよ。ただ、彼女はオーバル子爵家の令嬢だ。父上はそんな彼女を僕の婚約者としては認めてくれないだろう。だから僕は、婚約の話などを出そうとは思っていなかった。それは彼女だって、理解していると思っていた」

 国王様は寛大な方ではあるが、次期国王であるアヴェルド殿下の妻には、それなりの格を求めていることだろう。貴族であっても、最低でも伯爵家くらいまでしか認めないはずだ。
 そういう意味で、ネメルナ嬢はアヴェルド殿下と婚約することができなかった。それはともすれば、悲しいことかもしれない。
 ただ、それは私には関係がないことである。そういった恋愛的な情などは、今回の件では捨てて欲しい所である。