「事実を知った父は、私にアヴェルド殿下との関係を持つように命じました。父もモルダン男爵家やオーバル子爵家と同じように優遇してもらいたいと思っていたようです」
「……最低ね」

 メルーナ嬢の言葉に、ラフェシア様はとても冷たい言葉を発していた。
 ただそれは、当然のことだろう。私もラウヴァット男爵の行いには、思う所がある。
 しかし、そういったことを言うのは私の役目ではないため、黙っておく。私がやるべきことは、あくまでも今回の件をイルドラ殿下と協力して、治めることであるだろう。

「……あら?」

 そんなことを考えていると、ラフェシア様が声を出した。
 彼女の視線は、遠くに向いている。その方向を見てみると、使用人が立っていた。